見張り   北野勇作


 ほらね、今日も立ってる。いつ来てもあそこに立ってるんだ。そうそう、誰も中に入らないように、ああやって前で見張ってるの。まあそれが彼の仕事だから。
 命令なんだろうね。で、その命令を誰も取り消してくれないから、ずっとそのまま。ひどいよね。いや、彼だって知らないだろ、何があるのかなんて。そりゃ知らされてないよ、下っ端のただの見張り番なんだから。あるのは命令だけ。誰もこの先に入れるな、この向こうにあるものを誰にも見せるな、そんなとこだろ。だから、ああして見張りっぱなしだよ。もうなんにもないのにね。
 うん、彼はわかってないと思う。そりゃそうだよ。毎日こんなに大勢の人が、いったい何を見に来てるのか、なんて。まあ想像もつかないだろうさ。
 うん、彼を見に来てる、なんてことはね。





北野勇作
SFとか書いてます。

大喜利に参加させてもらいます。