精神整形手術   こばやしぺれこ


おや、いらっしゃい。ささ、お入りになって。
どうぞ掛けてください。センセイは今手術中ですので。
ええ、すぐに終わります。切除だけですので。
あなたもそうなんですよね? ああ、やはり。
余計なものがあるとね、ええ、生き辛いですものね。
そうです。私もね、『手術』してもらったんですよ。センセイに。
そうしたらね、それまでほんとーーーーーーーに生き辛かった毎日がね、
もうほんとうに。ラクになりまして。ええ。
やはりね、余計なものがあるとね、あちこちぶつかって、ねえ?
あなたもそうなんでしょう? ねえ?

ええ。ええそうでしょう。

朝起きて、お仕事にでかけて、働いて。
そして帰って、眠って。
それでまた起きて、お仕事にでかけて。
『個性』があるとねぇ。それだけで大変なんですよね。
「本当にやりたいことはこれじゃない」とかね。
「これに一体何の意味があるんだろうか」とかね。
考えちゃいますからね。ツライですよねぇそんなこと考えて、働くの。
ぶつかっちゃいますしねえ、エライ人と。
私たちみたいな『ただの人』にはねぇ。
無駄な個性はあるだけで苦痛ですから。求められてませんからねぇ。

でも安心してください。センセイは綺麗に切ってくれますから。

取った個性? 殆どは廃棄されますよ。
ああ、でもたまに『付けてほしい』って方も来ますから。
そういう時には保存していたのを付けて差し上げることもあるそうです。
わざわざそんな物好きな、生き辛い方を選ぶ方も、珍しいですけど。
ねえ?

ああ、終わったみたいですよ。
ご気分はいかがです? そうでしょう。なにも感じないでしょう?
あとはね、そうですね、テレビを見たり、ラジオを聞いたり。
それでもなにも感じませんので、穏やかにお過ごしくださいね。
自分で読むもの、漫画とか小説とかは苦痛になっちゃうと思うので。
ええ、勝手に入ってくるものを、流してください。
なにも感じませんけど。
これできっと生きやすくなりますよ。よかったですねぇ。
お会計はこちらで。先にご案内しますので、少しお待ちになって。

さ、あなた。どうぞ診察室にお入りになってください。





こばやしぺれこ
作家になりたいインコ好き。今度は二次創作の方で七転八倒中

ということを時々考えます。
あの写真を拝見したときに思い出しました。うーん顔のない無個性。
生き辛いなぁと思いつつ、個性を取ったらな自分何のために生きてるんだろうなー
となってしまうと思うので、私はまだ手術はいいですいらないです。
いらないですってば!